海外の学校でアートを重視する理由。批判的思考を育てるってどういうこと?

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アート=図工なの?

「アート」と聞くとどんな言葉を思い浮かべますか?

美術、芸術、学校関連でいうと図工、でしょうか。

欧米諸国ではアートが意味するものは広く、美術や芸術に加え、文学、演劇、音楽、ダンスなどのパフォーミングアートなどを指します。クリエイティブライティングもアートの要素をもつ国語の学びの一環です。

さらに、リベラルアーツを意味することもあり、その場合は一般教養的なものを指すので、歴史や哲学、宗教、倫理などさまざまな分野に行き渡ります。

海外の小学校や中学校などの初等・中等教育では前者のことを“アート”と指すことが多いようです。それでも日本の学校のような「図工」や「美術」とはだいぶ異なりますね。

欧米の学校やインターナショナルスクールでは、アートに重きを置いている学校も多く、作品発表イベントや作品コンテストなど、アートにまつわる活動も盛んです。

また、他の科目、例えばサイエンスや歴史、地理などと組み合わせてアート活動をすることも多く、絵で表現したり、工作で理解を深めたりという機会がたびたびあります。

では、なぜアートを重要視しているのでしょうか?

科目としてのアートに期待されていること

以下のような効果がアートの教育には期待されています。

1. 「ものを見る」力がつく

アート作品を注意深く観察することで、細部に気づき、複雑なパターンや隠された意味を読み解く訓練になります。

2. 正解のない問題に思考をめぐらせることができるようにある

一つのアート作品に対して無数の解釈が可能であるため、その可能性を探るうちに、異なる視点から考えたり、複数の要素を組み合わせたりする分析的思考が促されます。

3. コミュニケーションと表現

アートを語ることは意見や感想を明確に表現する良い機会となり、他者とのディスカッションを通じて自己の考えを調整し、理解を深めることができます。

4. 批判的な問いを立てられるようになる

アート作品に対する疑問を持ち、それを探究する過程で、批判的な質問を立てる能力が養われます。

5. 多様な視点を受け入れられる

アートは文化的背景や歴史的コンテクストを反映するため、それを理解し受け入れることで、より包括的で開かれた見方をする力が育ちます。

6. 文脈と解釈

 アートを評価する過程で、文脈を考慮することが重要です。これは、作品が作られた歴史的、文化的、社会的状況を分析することを含みます。このような分析を通じて、学生は情報を批判的に評価するスキルを培います。

なかでもSTEAM教育の文脈でアートの重要性が語られるとき、批判的思考を育てることができる点についてフォーカスされることが多いです。

批判的思考ってなに?何のために必要?

では、批判的思考とはなんでしょうか

「批判するのがいいことなの?」

と、思う方もいるのではないでしょうか。

英語ではクリティカルシンキングと言われるこの思考法は、物事を与えられたまま受け入れず、違う視点や異なる価値観などから検証するものの見方や考え方のことをいいます。

情報を鵜呑みにするのではなく、疑問をもち、別の論拠に当たって検討する。

偏見や固定概念に寄らずに、多様な立場から物事を捉える。

他者と対等な立場で建設的な議論を交わし、より複雑な事象について対処する。

などが批判的思考に期待される効果です。

情報が氾濫しフェイクニュースに悩まされ、どんどん複雑になってくる社会課題に取り囲まれた現代社会では、どうやら必須のスキルと言えそうです。

批判的思考は、暗記や知識偏重の旧来型の勉強では育たないと言われ、探究学習やアート教育などの有効性がうたわれているのです。

アートは人々に多様な角度から物事を見ることを促し、様々な解釈を可能にするため、批判的思考を養うのにとても適しているというわけです。

アート作品には決定的な「正解」が存在するわけではなく、人によって自分自身の感情、過去の経験、知識をベースに自由に解釈することができます。このプロセスは以下のような形で批判的思考のスキルを育むことができます。

アートはプロセスと経験を重んじます。それによって、世界をより豊かに理解し、新たな知見にオープンであるという柔軟な思考が促される、とされていて、だからこそアートの必要性を説く教育現場は世界的に増えているのです。

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